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2008年8月

6.『拍手の授業』は、なぜ80%に到達したか

「拍手の授業」を実践した結果、
21名中17名の生徒が、楽しく活動するようになりました。
81%です。

「拍手の授業」は、なぜ80%に到達したのでしょうか。

レディネスがさらに下がったから。

これが理由です。

『乳幼児の音楽教育』(T.S.ババジャン著、新読者社)に、次の記載があります。

8ヶ月までに、(中略)子どもは、ことばで言われて簡単な動作―「お手手パチパチ」、「さようなら」「握手しましょう」、「どっちが大きい」―をすることができます。


「8ヶ月」までに、「お手手パチパチ」ができる。

健常児なら、おすわりができて、両手が発達する時期です。

よって、8ヶ月の課題がクリアした生徒なら、「拍手の授業」ができる可能性があるといえます。

『おちたおちた』では、「1歳9か月」「0歳10か月」を、数値の根拠としてあげました。

『拍手の授業』は、0歳8ヶ月。

よりレディネスが下がります。

レディネスが下がれば、重度の生徒もできる可能性が広がります。

実際、模倣が難しくても、拍手の動作ならできる生徒がけっこういます。

しかしこの授業は、極めて短時間がよいようです。
やって1分程度。
2分以上すると、確実にだれます。

なぜか。

能力の高い生徒があきるから

これが、主な理由です。

レディネスが下がっても、能力が高い生徒も継続して楽しめる活動がなければ、

全ての生徒が満足する授業にはなりません。

『おちたおちた』では、「頭」「お腹」だけでなく、「りんご」等の指示も追加しました。

一方、『拍手の授業』は、「足踏み」「お腹」等の「模倣止まり」です。
能力が高い生徒が楽しむための配慮が、『拍手の授業』には欠けています。

それぞれ、一長一短です。

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7.『たのしいね』

『たのしいね』(山内佳鶴子作詞、寺島尚彦作曲)で、
歌と手拍子のかけあいをします。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

いきなり歌い始める。アカペラで。(伴奏する場合は、何も言わず始める)

♪たのしいね (手拍子)~

最後まで歌う。

手拍子の直前に、わずかに「間」を空ける。
子どもが動作模倣する時間を与える。
また目が合った子どもには、微笑みかける。

何人かの子どもが手拍子をする。
「そう。(○○くん、○○くん)上手!」と褒める。
近くにいるTTの先生にも褒めてもらう。
褒めることで、することを理解させる。

♪たのしいね (手拍子)~ 

2回目が終わる頃には、多くの生徒が手拍子をするようになる。
それでも、手拍子をしない(できない)生徒がいる。
歌詞を歌いながら、生徒のところに近づく。
両手を出して、歌詞に合わせて「手合わせ」を促すと、
喜んで手を合わせてきた。

♪たのしいね (足踏み)~ 

低い声で歌う。
伴奏をする場合は、低い音で。
歌詞も適宜替える。l


♪たのしいね (お腹をたたく)~

動作にバリエーションをつけていく。
なごやかな雰囲気で終わる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

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8.『たのしいね』は、なぜ80%に到達したか

『たのしいね』の原実践は、
『障害児の音楽指導』(松樹偕子、黎明書房)にあります。
より具体的に実践できるよう、修正追試しました。

『たのしいね』の授業により、
21名中18名の生徒が、楽しく活動できるようになりました。
86%です。

なぜ、『たのしいね』の授業は、80%に到達したのでしょうか。
理由は2つ。

(1)手拍子しない生徒を救えるから
(2)能力の高い生徒も楽しめるから

(1)
手拍子や足踏み等の模倣ができなくても、
「手合わせ」ならチャレンジする生徒がいます。

集団の中にいられるだけで精一杯だったとしても、
教師と向き合ってならなんとか活動できる、という生徒もいます。

そういった生徒をこの活動で救うことができます。

リーダーの教師も、歌いながら移動できます。
必要な生徒の前にいき、「手合わせ」ができます。

ちなみに、「手合わせ」は、
『認知発達治療の実践マニュアル-自閉症のStage別発達課題』(太田昌孝・永井洋子、日本文化科学社)でも、
模倣のための最初の課題として、あげています。
それほど、優しい課題であるといえます。

(2)
『たのしいね』は、毎回安定して多くの生徒が活動します。
特に、能力が高い生徒が楽しんで行います。
なぜか。

音楽に乗せながら、変化のある繰り返しで行うから。

行う動作は『拍手の授業』に似ています。
しかし、「音楽に乗せる」ところが違います。
能力が高い生徒にとって単純な活動も、
「音楽が伴う」と、楽しさが倍増します。
さらに「手拍子」「足踏み」「お腹」等、変化のある繰り返しですすめるので、
集中力が持続するようです。

『楽しいね』は、歌詞も動きを引き出しています。
松樹偕子氏は言います。

歌そのものが手拍子を要求しているわけですから、とてもやりやすいのです。

ここでは、歌詞を引用できませんが、
歌詞を読むと、その意味がわかります。
全く指示がなくても、授業をすすめることができるのです。

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9.できなかった20%の生徒をどうするか

今年度の集団(中学部2,3年生、重度重複学級含む)では、

授業の始めに、

 1.『拍手の授業』
 2.『たのしいね』

と、続けて行っています。
一つにしぼっていません。

なぜか。

1.「拍手」なら楽しんでし続ける生徒
2.「手拍子」はしなくても、「手合わせ」なら楽しんでする生徒
の両方がそれぞれいるから

です。

「一人でも多く救いたい」
「教師に向き合ってほしい」
「楽しく参加してほしい」

これらを実現するために、
今は、組み合わせて行っています。

しかし、それでも救えない20%の生徒が確実にいます。

できなかった20%の生徒をどうするか。

この問題が、常に教師に突き刺さります。

 「全ての生徒(=100%)」が教師と向き合い、楽しく参加できる

これを目標に、これ以後の、歌唱、身体表現、器楽、鑑賞の活動で
工夫をしていくことになります。

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授業パターン例1

私が、最近行った授業のパターン例です。

1 拍手の授業(身体表現)

2 たのしいね(身体表現、歌唱)

3 We Will Rock You!(身体表現)

4 名前呼び遊び(身体表現、歌唱)

5 リトミック(身体表現、鑑賞)

6 既習曲(歌唱、身体表現)

7 ほたるこい(歌唱)

8 星に願いを(器楽)

9 退場行進(身体表現、歌唱)

50分の授業で、9つの活動を行っています。
この方式は、『向山型で音楽授業-コマとパーツでこうつくる-』(飯田清美、明治図書)から学んだことです。

どの集団の中にも、
 「歌の好きな生徒」
 「体を動かすのが好きな生徒」
 「楽器が好きな生徒」
 「音楽を聴くのが好きな生徒」
と、様々な生徒がいます。

彼らが少なくとも、一時間の授業のどこかで活躍してほしい。
そのために、
「毎時間」「少しずつ」「多方面から」
これらの活動を取り上げるようにしています。

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0.重度・重複障害のある子どもを喜ばせる歌い方の工夫

特別支援学校(肢体不自由)での実践です。

知的障害の特別支援学校でも、効果があります。

重度・重複障害のある子どもに教師がうたを歌います。

しかし、教師がただ歌うだけでは、子どもを喜ばせることができないことがあります。

重度・重複障害のある子どもには、歌い方の工夫が必要です。

次に示す10の工夫で歌えば、重度・重複障害のある子どもを喜ばせることができます。

1.  音をたてて息を吸う

2.  目と口を大きく開けて歌う

3.  「メロディー」「リズム」どちらかを強調して歌う

4.  「メロディー」はこの方法で強調する

5.  「リズム」はこの方法で強調する

6.  歌(フレーズ)の終わりで、テンポを徐々に遅くする

7.  歌(フレーズ)の最後の音を伸ばす

8.  歌(フレーズ)の最後の音で、くすぐり遊びをする

9.  歌が終わった後、空白を入れる

10. 歌を突如止め、再び続きを歌う

※ ここでは、「重度・重複障害のある子ども」を

 1.学校教育法施行令第22条の2に規定する障害のうち、
  「知的障害」と「肢体不自由」の障害を併せ持ち、

 2.精神年齢が1歳未満の子ども

とします。

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1.音をたてて息を吸う

歌う直前に音をたてて息を吸えば、重度・重複障害のある子どもを喜ばせることができます。

歌う直前には、次のことをするとよいです。

音をたてて息を吸う

歌い始めはもちろん、歌の途中のブレスでも、これをします。

鼻で吸ったときの方が、「スーッ」と大きな音が出ます。

音をたてて息を吸った後に、うたを歌います。

なぜ、これがよいのでしょうか。

「音をたてて息を吸う」を繰り返すことによって、
「息の音の後に、歌が始まる」ことを予測できるようになるからです。

子どもは次に始まるうたに期待します。

教師に視線を合わせたり、より笑顔が増したりするようになります。

「音をたてて息を吸う」と同時に、次のことをするとさらに効果的です。

子どもに視線を合わせ、目と口を開く

これにより、「耳」だけでなく「目」を使って、
今から歌が始まることが予想できるようになります。

これらの方法は、子どもが元々、教師の歌ううたを好んでいることが、前提です。

 

 

【事例1】A子(障害名×××、中1、津守・稲毛式乳幼児精神発達診断×××)に「たのしいね」を歌う。
「たのしいね♪(タタタン)」の手拍子のところで、A子は教師に視線を合わせる。そして、ケラケラ声を出して笑う。
その後、「空白」があると、A子はさらに笑う。
しかし、5秒ほど空白が入ると、やがて視線が下がる。笑顔もなくなる。
次の歌詞を歌う前に、「音をたてて息を吸う」「子どもに視線を合わせて、目と口を開く」をやってみる。
するとA子は,歌が聞こえる前に、教師に視線を合わせるようになる。
しばらくこれを続けると、息を吸う音で、A子は笑顔で、視線を合わせるようになる。

 

 

【事例2】B男(障害名×××、中1、遠城寺式乳幼児分析的発達検査×××)に、「B男さーん♪」と、節をつけながら呼びかける。
B男はこの歌でくすぐり遊びをされると、笑顔になる。上半身を前後に振り歩きながら喜ぶ。
視線は合わない。
歌の後、しばらくすると、B男は笑顔がなくなる。動きもとまる。
そこで、B男と正面を向き合う。
「音をたてて息を吸う」「子どもに視線を合わせて、目と口を開く」をする。
はじめの2回ほどは、歌が聞こえるまで、変化はない。
3回目くらいから、歌が始まる前に、B男は再び笑顔になる。視線は相変わらず合わない。

 

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2.目と口を大きく開けて歌う

目と口を大きく開けて歌えば、重度・重複障害のある子どもを喜ばせることができます。


教師が歌うときは、次のようにするとよいです。

目と口を大きく開けて歌う

なぜこれがよいのでしょうか。

目と口を大きく開けて歌うことにより、
子どもは教師の顔に注目しやすくなるからです。

「耳」だけではなく、「目」を使って、
教師の歌に気づくことができるようになります。

あるいは、教師の表情の変化を楽しみながら、歌を楽しむようになります。

教師に視線を合わせる時間が増えます。

 

「目と口を大きく開けて歌う」は、本人はやっているつもりでも、
実際はそれほど変化がないことがあります。

日頃から鏡を見て、子どもが注目しそうな目・口の表情を作る練習が必要です。

 

【事例3】C男(障害名×××、中1、遠城寺式乳幼児分析的発達検査×××)に、「森のくまさん」を歌う。
C男は、寝返りができない。首を自分で傾けることもできない。
ゆっくり移動する物を追視することはできる。
C男の目前で、「目と口を大きく開けて歌う」をする。
4月は、この方法で歌っても、教師から視線をはずしていた。
7月になって、徐々に教師の顔を見るようになった。
9月のはじめには、教師の歌の間、ずっと視線を合わすようになった。

【事例4】D男(障害名×××、中2、津守・稲毛式乳幼児精神発達診断×××)に、「どこかで春が」を歌う。
床の上で座位姿勢にさせる。D男と正面を向き合って、体に触れながら歌う。
D男は、前傾姿勢になり顔を伏せる。
D男の顔を覗き込んでみると、笑顔にはなっている。
視線を合わさないが、教師の歌を聞いているようである。
そこで、D男の体を起こして、「目と口を大きく開けて歌う」をする。
できるだけ、大きく顔の表情をつける。
するとD男は、起こされた体を自分で定位させるようになった。教師の「口」をじっと見るようになった。
しかし、自分の好きなフレーズがくると、視線を教師からはずして笑っていた。
2ヶ月たって、今度は教師と「目」を合わせながら聞くようになった。
さらに、お気に入りのフレーズを聞くと、教師の「目」を見ながら笑いかけるようになった。

 

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3.「メロディー」「リズム」どちらかを強調して歌う

「メロディー」「リズム」どちらかを強調して歌えば、重度・重複障害のある子どもを喜ばせることができます。

教師が歌うときは、さらに次のことにするとよいです。

「メロディー」「リズム」どちらかを強調して歌う

なぜか。

どちらかを強調して歌うことで、
より明確に音楽が子どもに伝わるようになるからです。

子どもの反応は、より強くなります。

【事例5】D男(障害名×××、中2、津守・稲毛式乳幼児精神発達診断×××)に「ドレミの歌」を歌う。
D男は元々この歌が好きである。
普通に「ドはドーナツのド レはレモンのレ~」と歌う。
D男は常時手が動いているが、教師の歌が聞こえると、手の動きが止まる。そして、教師の顔を見る。
笑顔はない。
次に、「リズムを強調」して、同じ所を歌う。
「ドはドーナツのド レはレモンのレ~」のように傍点のところで、アクセントをつけて歌う。
同時に両手で肩にタッチする。
D男は、笑顔になる。3つ目の「ド」「レ」を特に強調して歌うと、声を出して笑う。

【事例6】同じくD男の「ドレミの歌」。
「ソはあおいそら~」から一転し、「メロディーを強調して歌う」ようにする。
「ソはあおいそら~」をクレシエンド(だんだん強く)しながら歌う。
直前までの「リズムを強調して歌う」と、対比させる。
D男は、普段出さない「ウー」という声をあげて喜ぶ。

なぜ、「メロディー」「リズム」のどちらかを強調して歌えば、
より明確に音楽が子どもに伝わるようになるのでしょうか。
子どもの反応がより強くなるのでしょうか。

それは、「音楽の3要素」に関係します。

「音楽の3要素」とは、①「メロディー」、②「リズム」、③「和声」のことです。

(「音の3要素」は、a.音の強さ、b.音の高さ、c.音色のことです)

「音楽に注意が向く」というのは、
「上記3つのいずれか、あるいはその組み合わせ、に注意が向く」ということであす。
(「音の3要素」は、ここでは考慮しません)

したがって、これらのどれかを強調して歌えば、
より明確に子どもに伝わるのです。

子どもの大きな反応がより強くなります。

「和声」を強調させるには、音楽の知識が必要です。
(センスがある人は、無意識に強調することができます)

また、教師の歌だけでなく、伴奏もともに工夫しなければなりません。

したがって、ここでは触れません。

「メロディー」と「リズム」  は、教師の歌のみで、強調させることができます。

「メロディー」「リズム」両方を強調して歌うと、どちらか一方の効果が半減します。

どちらか一つを強調させる方がよいです。

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4.「メロディー」はこの方法で強調する

音の進行に合わせて声を大きくしたり小さくしたりすれば、重度・重複障害のある子どもを喜ばせることができます。


「メロディー」を強調して歌うには、この方法がよいです。

音の進行が上がり傾向であれば、声を徐々に大きくしていく。
音の進行が下がり傾向であれば、声を徐々に小さくしていく。

自然にメロディーを歌ってみれば、このような歌い方がここちよいです。

意識的に、この方法でメロディーを強調させます。

より大きな反応として返ってきます。

『音楽表現法』(鈴木鎮一、全音楽譜出版社、1958)に、
「抑揚表現の一般的原則」として、次の記述があります。

音階的な音の上下に正比例して、音の強弱を表現していくこと

これにより、一本調子でなく、味のある、感動のある歌が表現できます。
メロディーの表現を工夫すれば、子どもにより伝わりやすくなるのです。

【事例7】E男(障害名×××、中2、津守・稲毛式乳幼児精神発達診断×××)に「大きな栗の木の下で」を歌う。
E男は、普段この歌を聞くと、「アー」と声を出して喜ぶ。
「あなたとわた(し)」のところで、「声を徐々に大きくしていく」をする。
さらに次の「なかよくあそびましょう」で、「声を徐々に小さくしていく」をする。
E男は、さらに大きな声で「アー」と言うようになる。

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5.「リズム」はこの方法で強調する

リズムを3つの方法で強調して歌えば、重度・重複障害のある子どもを喜ばせることができます。

「リズム」を強調して歌うには、これらの方法がよいです。

(1) アクセントをつけて歌う
(2) アクセントに合わせて、体に触れる
(3) アクセントの前に、「間」を入れる

腕、足から触れていくのが、抵抗がないようです。

また、「唇」を触れられると喜ぶ子どもも多いです。

しかし、子どもによっては、過敏により触れられることが嫌がる子どもがいます。

注意が必要です。

(3)は、『旋律法入門』(熊田為広著、春秋社)の次の文から学びました。

4 間をとるアクセント
ある印象的な音や強調しようと思う音の直前に、突然「間」をとりその効果をあげる
方法である。(138ページ)

とくに、各小節の1拍目に入れると効果的です。

「間」といっても、わずかなものです。長くても0.5秒以内です。

【事例8】F男(障害名×××、中2、津守・稲毛式乳幼児精神発達診断×××)に「てとてとてと」を歌う。
F男は、普段からこの歌を聞くと、「アー」と声を出して喜ぶ。
「はーるだ はーるだ はーるだ」の傍点のところで、「アクセントをつけて歌う」「アクセントに合わせて体(腕)に触れる」をする。
さらに、3つ目の「は」で、「アクセントの前に、『間』を入れる」をする。
F男は、さらに大きな声で「アー」と言う。興奮し、両足を交互に動かすようになる。


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6.歌(フレーズ)の終わりで、テンポを徐々に遅くする

歌(フレーズ)の終わりで、テンポを徐々に遅くすれば、重度・重複障害のある子どもを喜ばせることができます。


歌の終わりに近づいたら、次の方法で歌うとよいです。

テンポを徐々に遅くして歌う

なぜこれがよいのでしょうか。

歌の終わりにテンポを徐々に遅くしていくと、緊張が生まれます。

そして、歌の終わりを予測しやすくなります。

教師の歌に、より集中するようになります。

聞き慣れている歌であれば、次の方法もよいです。

各フレーズの終わりでも、テンポを徐々に遅くして歌う

【事例9】G男(障害名×××、中3、遠城寺式乳幼児分析的発達検査×××)に「チューリップ」を歌う。
G男は、普段この歌を聞くと、膝立ち姿勢のまま上体を上下に揺らし続ける。笑顔になることも多い。視線は下に伏せがちである。
「チューリップ」の歌が終わっても、上体を揺らし続ける。
しばらくすると、歌の終わりに気づいたのか、動きが止まる。
歌の最後「どのはな みても きれいだな」のところで、「テンポを徐々に遅くして歌う」をする。
するとG男は、突然、上体の動きが止まるようになった。
繰り返してこの方法で歌い続ける。
G男は、歌の最後のところで、上体の動きが止まるだけでなく、教師に視線を合わせるようになった。

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7.歌(フレーズ)の最後の音を伸ばす

歌(フレーズ)の終わりで、テンポを徐々に遅くすれば、重度・重複障害のある子どもを喜ばせることができます。

「6.歌の終わりでテンポを徐々に遅くする」と合わせて、
歌の最後で次のことをするとより効果的です。

歌の最後の音を伸ばす

なぜこれがよいのでしょうか。

歌の終わりが強調されるからです。

歌の終わりの音で、子どもたちは「快」を感じることが多いようです。

強調されると、さらに「快」の気持ちが大きくなります。

さらに、次の方法もよいです。

各フレーズの終わりの音も、伸ばして歌う

【事例10】G男に「チューリップ」を歌う。
「どのはな みても きれいだな」の最後の「な」で、「歌の最後の音を伸ばす」をする。
歌の最後で視線を合わせて聞くようになったG男は、この「な」を聞くと、さらなる笑顔で、視線を返すようになった。

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8.歌(フレーズ)の最後の音で、くすぐり遊びをする

歌(フレーズ)の最後の音で、くすぐり遊びをすれば、重度・重複障害のある子どもを喜ばせることができます。

6.「歌(フレーズ)の終わりで、テンポを徐々に遅くする」
7.「歌(フレーズ)の最後の音を伸ばす」とあわせて、
さらに、次のことをすると、いっそう効果があります。

歌(フレーズ)の最後の音で、くすぐり遊びをする

子どもは、歌の最後で「くすぐり遊び」があることを期待するようになります。

期待するようになると、歌の終わりごろから、反応が変わります。

歌の最後の音でくすぐり遊びをすることは、多くの子どもに喜ばれるようです。

初めて出会う子どもにもこれをすると、子どもとかかわるきっかけができます。

しかし、触覚が過敏な子どもにはしない方がよいです。

【事例11】G男に「チューリップ」を歌う。
「どの花見ても きれいだな」の最後の「な」で、くすぐり遊びをする。
腰のあたりをくすぐる。
G男は、「キャッキャッ」と言って、興奮する。
繰り返し行うと、「どのはな みても」の歌詞を歌うころから、教師の目を見て伺い、体
を構えるようになった。
くすぐり遊びをした後、教師の手をつかみ、催促するようになった。

【事例12】G男が「チューリップ」を聞くのに慣れてきたので、
6「歌(フレーズ)の終わりで、テンポを徐々に遅くする」
7「歌(フレーズ)の最後の音を伸ばす」
8「歌(フレーズ)の最後の音で、くすぐり遊びをする」
を、「各フレーズ」にした。
「各フレーズ」は、以下の2つである。
(1)「さいたさいた チューリップのはなが」
(2)「ならんだならんだ あかしろきいろ」

「チューリップの~」「あかしろ~」からテンポを徐々に遅くする。
傍点部分の音を伸ばす。
そして、くすぐり遊びをする。
フレーズごとでも、テンポが遅くなると、じっと教師の顔を見るようになった。
くすぐり遊びをすると、「キャッキャッ」と言って喜ぶようになった。

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9.歌が終わった後、空白を入れる

歌が終わった後、空白を入れれば、重度・重複障害のある子どもを喜ばせることができます。


最後は、次のことをするとよいです

歌が終わった後、空白を入れる

なぜこれがよいのでしょうか。

「歌が終わったこと」がより明確に感じ取れるようになるからです。

歌が終わったことが明確になると、余韻を楽しんだり、
教師に次の歌を催促したりするようになります。

空白は、3秒~5秒程度でよいです。

【事例13】D男に「大きな栗の木の下で」を歌う。
歌の最後の歌詞「おおきなくりの きのしたで」のところで、「6 歌の終わりで、テンポを徐々に遅くする」「7 歌の最後の音を伸ばす」をする。
その後、「歌が終わった後、空白を入れる」をする。
D男は、笑顔で教師に視線を合わせ、最後の音で、声をあげる。
歌が終わった後も、笑顔のまま視線を合わせ続ける。
しばらくして、教師の口を触って、歌を催促する。

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10.うたを突如止め、再び続きを歌う

うたを突如止め、再び続きを歌えば、重度・重複障害のある子どもを喜ばせることができます。


教師が歌うとき、これをすると喜ぶ子どもがいます。

うたを突如止め、再び続きを歌う

なぜか。

予想が裏切られて、無音になるのが、楽しいからです。

メロディーを聞かせる歌より、リズム感のある歌の方が、
途中でとめられると楽しいようです。

 

 

【事例14】H子(障害名×××、中2、遠城寺式乳幼児分析的発達検査×××)に「さんぽ」を歌う。
H子は、歌を歌っても、あまり大きな反応を示さない。
アクセントをつけて歌い、さらに歌の終わりを強調すると、表情が変化する程度である。
「さんぽ」の最初の部分「あるこう あるこう わたしはげんき」で、止める。
すると突然、H子は「ハハハハ」と笑い出した。
一度笑った後は、継続させても、もう笑わない。
しばらくして、再びさんぽを歌う。
同じように、途中でとめると、再び笑い出す。

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1.歌唱指導の基本パターン

歌唱指導は、基本として、次の順で行っています。

時数は、習熟、計画に合わせて増減します。

身体表現が伴ったり、器楽が伴ったりするものは、これらをアレンジしていきます。

第1時

1.教師の範唱を聴く(アカペラで)

2.教師の範唱を聴く(伴奏つき)

3.小さな声で歌う

4.斉唱する

第2~3時

1.教師の範唱を聴く(アカペラで)

2.斉唱する

3.歌詞(+絵本)の読み聞かせをする

4.サビの部分を追い歌いする

5.マジック・フラフープシステム
 (河原木孝浩氏実践の修正版)で独唱する

6.斉唱する

第4時

1.教師の範唱を聴く(アカペラで)

2.斉唱する

3.歌詞解釈

4.斉唱する

第5時以降

既習曲として、1回歌う

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2.第1時の流れ

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歌唱指導法の続きです。

『冬景色』(文部省唱歌)の指導です。

♪さぎり きゆる みなとえの ~

説明なし。いきなり歌います。

アカペラで教師の範唱を聴かせます。

「重度・重複障害児を喜ばせる歌い方の工夫10」を使ったり、アイコンタクトをしたりして歌います。

うたの終りに、数秒の空白をあけます。余韻を持たせます。

その後、説明せず、伴奏をスタートさせます。

♪さぎり きゆる みなとえの ~

パソコンやスケッチブック等で歌詞や絵を提示しながら範唱を聴かせます。

パソコンを使うときは、必要に応じて電気を消してスクリーンの画面を見やすくします。

 

冬景色といいます。冬景色、さんはい。

曲名を文字カードで見せながら、復唱させます。

 

もう歌える、という人?

手を挙げてみせながら発問します。

「はい!」と元気に手を挙げる生徒が数名います。

もう歌える、という人は、

♪(小さな声で)さぎり きゆる みなとえの

小さな声で、歌います。

手を挙げた生徒にアイコンタクトしながら、小さな声で歌ってみせ、小さな声で指示します。

まだだな、という人は、先生の声を聴きます。

手を挙げなかった生徒に、アイコンタクトしながら指示します。

 

伴奏をスタートさせます。

♪さぎり きゆる みなとえの ~

パソコンやスケッチブック等で歌詞や絵を提示しながら歌います。

事前に指示しても、最初から大きな声で歌ってしまう生徒もいます。

教師は歌いながら、人差し指を口にして、「しー」のポーズをみせます(表情はあくまで「にっこり」と)。

しかし、それ以上の注意はしません。

○○さんは、じっと聴いていましたね。すばらしいです。

聴いていた生徒、あるいは、歌のあいだ体を動かしていた生徒を、ピックアップして褒めます。

 

全員起立。

どんな声でもいいです。

どんなに間違ってもいいです。

教室いっぱい響かせます。

 

伴奏をスタートさせます。

さんはい。

♪さぎり きゆる みなとえの ~

パソコンやスケッチブック等で歌詞や絵を提示しながら歌います。

身振りをつけて「さんはい」と言うことで、出だしを明確にします。

もう、歌えるようになった。

とってもいい顔でした。

みなさん、すばらしいです!

全員を褒めて終えます。

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3.第1時 1.教師の範唱を聴く(アカペラで)

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歌唱指導法の続きです。

指導の始めに、説明はしません。

いきなり歌い始めます。アカペラで。

♪さぎり きゆる みなとえの~

第1時に限らず、歌唱指導の始まりは、ほとんど教師のうたから始めています。

うただけで生徒を引き付けるのです。

特に、最初はアカペラが効果的です。

アカペラだと、

「重度・重複障害の子どもを喜ばせる歌い方の工夫10」を取り入れて歌うことができる

からです。

 

「重度・重複障害の子どもを喜ばせる歌い方の工夫10」は、もともと、肢体不自由の特別支援学校で生まれた実践です。
肢体不自由の子どもだけでなく、知的障害の特別支援学校の子どもでも、効果があります。

この工夫10をとり入れて歌うことで、
特に、知的障害が重度の子どもをも引き付けて
うたを聴かせることができます。

全体指導では、10の工夫のうち、次の6つが有効です。

1.  音をたてて息を吸う

2.  目と口を大きく開けて歌う

4.  「メロディー」はこの方法で強調する

6.  歌(フレーズ)の終わりで、テンポを徐々に遅くする

7.  歌(フレーズ)の最後の音を伸ばす

9.  歌が終わった後、空白を入れる

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『音楽教育しょうもないネタ集&つぶやき集』にご紹介いただきました。(追記)

本ブログが、

『音楽教育しょうもないネタ集&つぶやき集』のブログ

にご紹介いただきました。

『西川諭先生』
http://ameblo.jp/creative-conduct/entry-10131110467.html


『アカペラで範唱する』
http://ameblo.jp/creative-conduct/entry-10140251403.html

creative-conductさん、ありがとうございます。

『音楽教育しょうもないネタ集&つぶやき集』は、
タイトルとは裏腹に(!)、
特別支援教育ならびに、音楽教育の
「いいな!」と思える情報が満載です。
何よりも、その情報量に圧倒されます。

ぜひ、ご覧になってください。

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4.アイコンタクトをしながら歌う

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歌唱指導法の続きです。

教師のうただけで生徒を引き付けるには、これも必要です。

アイコンタクトをしながら歌う

常に、生徒の表情を見ながら歌うのです。

基本は2つ。

1.全員にアイコンタクトをする(2-3秒に1回)

2.目が合った生徒に、さらに微笑み返す

私は現在、20人の生徒に音楽の授業をしています。
集団から離れた生徒がいないのであれば、「2-3秒に1回」のアイコンタクトは十分可能です。

また、「さらに微笑み返す」くらいですから、「常に微笑んでいる」ことが前提です。(もちろん、悲しい歌、寂しい歌等であれば、話は別です)

フレーズの終り、うたの終りだと、微笑みを返しやすいです。

 

アイコンタクトをするとしないとでは、生徒の反応が全く違います。

アイコンタクトをしながら歌うと、生徒がより集中して教師のうたを聴きます。

ただ歌うだけでは、教師の「一方通行」です。

しかし、アイコンタクトをしながら歌うと、「双方向」のコミュニケーションの可能性が生まれます。

歌っている間、教師が微笑みかける。生徒が目が合わす。さらににっこり微笑み返す・・・。

共にうたを楽しむ時間を作ることができます。

 

アカペラ時は、さらに次のことをします。

うたの「特定の場所」で、「特定の生徒」に近づき、アイコンタクトをしながら歌う

 

うたの「特定の場所」とは、

1 はじまり

2 クライマックス

3 おわり

をいいます。

「特定の生徒」とは、

A 知的障害が重度の(重複学級の)生徒

B 参加が消極的な生徒

をいいます。

いわば、作品の「おいしい」ところを、「自ら歌えないけど、うたを楽しんでほしい生徒」に向かって、歌います。

これをすると、A、Bの生徒も、教師のうたに声に出して喜んだり、じっと聴き入ったり、目を合わせたりします。

全体を見渡しながら、これをすることで、多くの生徒を教師のうたで引き付けることができます。

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